「チケットがあるから」と、知人からコンサートに誘われた。
案内チラシを見せてもらうと、何人かフォーク歌手が出演するのだけど、
どうも年齢層がかなり上のようで、歌手の名前を聞いてもピンと来ない。
30代の私では、フォークソング自体に馴染みがないのだ。
「でも知ってる歌がいっぱいあると思うよ。すごくいいから、とにかく行こう」
恐らく知人は、もうすこし上の世代の人を誘いたかったのだろうけど、
都合が合わなかったなど事情があった様子。
見るとチケット代金も高いし、席を空けたくないようだ。行くことにした。
会場は、団塊の世代、もしくはそれ以上と思われる年齢層で満員で、
なんと私が最年少。女子トイレでは、介助つきの方も何人か並んでいた。
開演すると、歌ではなく、なぜか精神科医だという白髪のおしゃれな紳士が
登場して、「加藤和彦」という歌手のことについて語り始めた。
会場は喜んで頷いたり、笑ったりしているんだけど、私は話の前後関係も
わからないし、人物相関図も頭に浮かばないし、ちんぷんかんぷん。
その後に登場する人も、フォークの歴史をおもしろおかしく語ったり、
加藤和彦と自分との関わりを紹介したり、加藤和彦の作ったという歌を
歌ったりしている。
ほー、今日のメインは加藤和彦っていう人なんだな。
しかし、話を聞いていると凄まじい大物なんだな。
これだけ語りまくって期待感を高めているんだから、よっぽどだ。
あっ、「あのー、すばーらしい、愛をもう一度ー♪」って、この曲知ってるよ!
中学校の音楽の教科書に載ってて、授業で合唱したもん! す、すごい!!
でも、こんなに前座の歌手たちが歌ってしまったら、本人の歌う歌が減っちゃう
じゃないか。
うーむ、老体にムチ打つわけにもいかず、勿体ぶって時間を稼いでいるのか。
ああ、はやく加藤和彦出てこないかなー!
・・・なんて感じで、じいーっとちんぷんかんぷんの話を聞きながら、
ご本人の登場を待っていたのだけど、ちっとも出てこないまま、第一部終了。
えええっ、これだけ語りまくって、そのメインが登場しないまま、休憩!?
す、すごすぎる。外タレのコンサートでもなかなかやらない演出だよ。
芝居『黒蜥蜴』だって、一幕から美輪明宏でてくるもん。
いいのか、こんなにもったいぶってて。団塊の世代って、気が長すぎる!!
と、思ってたら、第二部の語りを聞いていて、やっと意味がわかった。
びっくりだよ!! 加藤和彦という人は、とっくに亡くなっていたのだ!!!
そして、なんで精神科医がコンサートに出てるの? と不思議でたまらなかった
お洒落な男性は、加藤和彦と一緒に「ザ・フォーク・クルセダーズ」として活動して
いた北山修さんという人だった!!
そういうことだったのかー!!
これはつまり、加藤和彦を偲び、フォークの時代を懐かしむコンサートだったのね。
誰も教えてくれないから、あたしひとりで加藤和彦が出てくるの心待ちにしちゃったよ!!
そして、後半の終わりごろに、さらにびっくりたまげることがおきた。
小室等さんという白髪の大物フォークシンガーが、ギターをつまびきながら
『イムジン河』という曲を歌いはじめたんだけど・・・
はじめて聞いたその歌の歌詞にびっくり!
朝鮮半島分断がテーマになっており、北朝鮮側の人間の気持ちになって
南側の故郷を思う気持ちを、日本語で歌っているというものなんだけど・・・
ひえー、戦後ってこんな反戦歌まであったのかあああ!
なんか、すんごい世界だなあ・・・・
と思って聞いていたら、
わたしの右の人も、左の人も、前も後も、そこに集まっていた聴衆全員が
一緒になってこの曲を大声で歌いはじめるもんだから、
もうめっちゃらくっちゃらにびっくらこきまろ!!
こ、こんなに歌いまくるほど、この曲、流行したのおお!?
ふ、ふうううう・・・。
ジェネレーションギャップって、自分より若い世代を見て感じるもののように
思いがちだけど、自分がまだ生まれていない時代に対しても感じるんだよね。
団塊の世代と自分とのギャップにぎょっとするほど衝撃を受けた昨日でありました。
びっくりびっくり。